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2011年6月18日 (土)

おばあちゃん世代の”セカチュー””智恵子抄”の舞台・福島二本松

 福島原発事故で避難している二本松がニュースに登場することが多いです。二本松といえば、おばあちゃん世代の”セカチュー”(世界の中心で愛を叫ぶ)ともいえる、高村光太郎の”智恵子抄”の智恵子の生家があった町で、安達太良山に抱かれた城下町です。

ここの藩主は代々丹羽氏で、もともとは愛知県・尾張の出身で、織田信長の重臣だった丹羽長秀の末裔ですから、愛知県民としても親近感があります。

二本松の城跡は、日本の桜百選に選ばれる桜の名所で、満開の時期訪れたことがありますが、戊辰戦争の落城のとき散華した”ラストサムライ”たちの魂が、よみがえったかのような、心に迫るものがありまして、それは見事なものでした。
Photo 二本松城址

そうした透明感あふれる町の空気の中ではぐくまれた智恵子と、彫刻家であり詩人でもある高村光太郎の愛の足跡を詩につづったのが”智恵子抄”です。

安達太良山に抱かれた城下町二本松の凛とした空気と、そこで育まれた女性への情愛を詠んだ”樹下の二人”という詩は、福島の風土が生んだ名作ですが、その舞台となった美しい町二本松が原発事故の放射能汚染にさらされているのは悲しいことです。

Photo_2  安達太良山

「樹下の二人」

あれが阿多多羅山、

あの光るのが阿武隈川。

 

かうやって言葉すくなに坐っていると、

うっとりねむるような頭の中に、

ただ遠い世の松風ばかりが薄みどりに吹き渡ります。

この大きな冬のはじめの野山の中に、

あなたと二人静かに燃えて手を組んでゐるよろこびを、

下を見てゐるあの白い雲にかくすのは止しましょう。

あなたは不思議な仙丹を魂の壺にくゆらせて、

ああ、何という幽妙な愛の海ぞこに人を誘ふことか、

ふたり一緒に歩いた十年の季節の展望は、

ただあなたの中に女人の無限を見せるばかり。

無限の境に烟るものこそ、

こんなにも情意に悩む私を清めてくれ、

こんなにも苦渋を身に負ふ私に爽かな若さの泉を注いでくれる。

むしろ魔もののやうに捉へがたい。

妙に変幻するものですね。

あれが阿多多羅山、

あの光るのが阿武隈川。

ここはあなたの生まれたふるさと、

あの小さな白壁の点点があなたのうちの酒庫。

それでは足をのびのびと投げ出して、

このがらんと晴れ渡つた北国の木の香に満ちた空気を吸はう。

あなたそのもののやうなこのひいやりと快い、

すんなりと弾力のある雰囲気に肌を洗はう。

私は又あした遠く去る。

あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ、

私の恐れる、しかも執着深いあの人間喜劇のただ中へ。

ここはあなたの生まれたふるさと、

この不思議な別個の肉身を生んだ天地。

まだ松風が吹いてゐます。

もう一度この冬のはじめの物寂しいパノラマの地理を教へて下さい。

 

あれが阿多多羅山、

あの光るのが阿武隈川。

「 高村光太郎::“智恵子抄”」より引用 

原発事故に苦しむフクシマ・・・遠くはなれた名古屋より、一日でも早い復興の日を祈ります。

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