NHKドラマ「おしん」再放送・・30年前TOKYOが世界のファッションをリードしようとしていた時代になぜ「おしん」だったのか?
世界60カ国以上で爆発的にヒットしたNHKドラマ「おしん」が今年から再放送されています。
「おしん」が放映されたの昭和58年(1983年)は、日本が戦後の奇跡的経済成長の階段を上りきり、「バブル」という堕落の道に踏み入る直前のもっとも頂点に近づいた時代でした。
市場ではSONY・HONDAをはじめとした「MADE IN JAPAN」の製品が世界中でもてはやされ、文化面でも、ギャルソンの川久保玲、ワイズの山本耀司などが牽引した日本のファッションデザイナーが世界的に高く評価され、DCブランドブーム全盛期の「東京コレクション」は、世界のファッション界をリードする存在だったと思います。
※参考画像1980年にブレークしファッション革命を牽引したワイズ(山本耀司)・コム・デ・ギャルソン(川久保玲)のボロルック
私自身にとっても昭和58年というのは東京に出た年で、その時代の空気みたいなものは鮮明に覚えています。
なごり雪が舞う原宿の町に、寒さをものともしない春夏コレクションを先取りしたマリンルックの女の子たちが闊歩している姿に、トレンドを追いかけるとんでもないエネルギーを感じたものです。前年にはルーズシルエットのモノトーンのボロルックの女の子たちがあふれかえっていたのに、次の年にはさわやかなマリンルックがあふれかえっているわけですから、すごい衝撃でした。
そんなきらびやかな時代に、明治時代に山形の貧しい山村で生まれた「おしん」という女の子のドラマが放映されたわけですが、トレンドを追いかけることに夢中になっていた当時の自分にしてみれば、無縁の話で、65%という脅威の視聴率をたたき出したというニュースを聞いてもぴんときませんでした。
しかし、あれから30年たった今、「おしん」を見てみると、当時の時代の空気からいえば場違いだったような「おしん」がヒットした理由もわかる気がします。世界60カ国以上で放送され、大ヒットしたそうですが、どこの国の人でも真ん中にあるのは、「こころ」ということなんでしょうね。
83歳になった「おしん」が、自分の過去の足跡をたどるという設定のドラマの導入部で、孫の青年に「一生懸命生きてきたが、私たちはどこかで間違った気がする。」「どこで大切なものを見失ったのか見つけ出したい」と語る象徴的なシーンがあるんですが、戦後の日本がひとつの頂点に達したときに覚えた達成感以上の喪失感・・・・戦前戦後を生きてきた多くの日本人のおとなたちが感じたち戸惑いに対する答えを垣間見せるドラマだったんでしょう。
多くの日本人が、貧しさと戦い、物質的な豊かさを求めて、富を求めてまい進して今日の日本の繁栄を築いたわけですが、その一方で人として大切な多くのものを見失ってきたのも事実です。あれから30年たった今も、日本は、いまだに「おしん」が探した答えを手繰り寄せることができないでいます。
「おしん」が描いた明治~大正~昭和・・・戦前戦後の物語は、日本人のDNAに刻まれたこころの原風景そのものですが、そこからこれからの日本の生きるヒントが見出せるような気がします。
一昨年の東日本大震災で、多くの日本人が、「人と分かち合うなにげない日常の積み重ねの中にこそ価値がある」ということを実感させられました。最近街で赤ん坊を連れた若い子の姿をよく見かけますが、「子を産み育て、世代をつないでいく」というあたりまえの日常生活の中にこそ、スタープレイヤーになるのと同等の輝きがあるということを、あらためて実感できるようになった人たちが増えたということではないでしょうか。
物質的豊かさを求めて奇跡の経済成長を遂げ経済大国になった日本ですが、30年前にその頂点を極めて以来次の方向が見えずさまよい続けてきました。しかし、エネルギーの転換にしても、農業の再生にしても、共同体の再生にしても・・・・人間としてのこころに立脚した新たな生き方があらゆるところで広がり始めた気がします。
30年前のドラマ「おしん」の再放送を見ながら、あらためて日本人のこころの原風景と向き合う時ではないかと感じました。
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